帰って来た怪獣おもちゃ・その2

今回の投稿は、帰って来た怪獣おもちゃ・その2

第二次怪獣ブームを玩具業界内部から
見た、中の人達の証言記事になります

この記事、怪獣人形ファンとしては、
必修項目だと思うので、今回載せる事
にしましたが、、、文字数が多いので
本文は、三回に分けて投稿します。





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怪獣を発売した動機は、、、
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子どもに夢と希望を与える玩具
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それでは、各社に怪獣おもちゃをはじ
めた理由を聞いてみよう。

「これまでのキャラクターものの人気
の移り変わりをみると、四年ごとに一
つの山があるので、またマスコミキャ
ラクターが見直される時期ではないか
と考え、当社でも昨年より怪獣ものを
企画した。それにマスコミキャラクタ
ーものは、ブーム的な人気の波も激し
いが、一面、地道に売れる要素もある
から」(米沢玩具・大熊氏)

「子どもは怪獣に対して、”こわいも
のみたさ”的一種のあこがれを抱いて
いるが、それを玩具化した場合にはか
わいいものとして迎えられるのではな
いかと考えた」(日東科学・城島貞雄
企画部長の話)

「生活の中でエネルギーの発散、イマ
ジネーションの展開を阻まれている、
現代っ子にとって、日常生活を超えた
ところへ関心と普及を志向させるのは
当然のなりゆきだろう。こうした状況
こそ、一時の怪獣ブーム以後も衰退せ
ず、すっかり定着している怪獣の秘密
ではないか。そうした市場背景をもと
にして怪獣に踏み切った」(トミー・
森氏)

「子どもの心情にマッチし、無限の空
想性を、持ち合わせた怪獣には大いに
魅力を感じ、主力とはしていないまで
も、一部商品のキャラクターとして注
目している」(バンダイ・神谷善次内
地部次長の話)

「宇宙時代にマッチし、なおかつ子ど
も(男児)の本能に強く訴えるものと
して、怪獣ものと取組んだ」(増田屋
斎藤貿易・織地氏)

「怪獣の元祖、原型ともいえる恐竜を
教育玩具的に扱うために科学評論家・
相島敏夫先生の指導で怪獣の本質を、
子どもが科学的に理解できるように、
図解の立体化をねらって、開発した」
(大協・酒井通雄社長)

「魅力あるキャラクターだから」
(大里玩具産業・大里武一社長)

「一つには本格的な値価格ものがなか
ったためだが、テレビで再放映が始ま
ること、男児ものペンダントに、チャ
レンジしようと考えた」(ニッコー・
平野徳男常務)

「生産を始めるにしても中止するにし
ても情報網を持っているのでマスコミ
玩具に関しては絶対的な自信を持って
いる」(タカトク・須藤茂営業部長)

「テレビ、映画、雑誌などで、わが社
としても子どもの夢をかなえる遊びの
一環として開発した」(三栄貿易・湯
浅浩二国内部課長の話)

「各怪獣が主人公的性格を持っている
のでシリーズとして企画できるから」
(美研・金子忍氏の話)

「テレビキャラクターの一つとしての
怪獣程度としか考えていない(山勝商
店・山本昌司専務の話)

「別にどうということではなく、怪獣
ブームだからという軽い気持ちで始め
た」(ツクダ・尾崎弘氏)

以上のように、相当線密な計算のもと
に発売したところもあれば単にブーム
に便乗してやれという程度の考えによ
るところもあり、怪獣にかける意欲も
千差万別である。

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ブームまでの足どり
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ここで、怪獣おもちゃの人気の消長に
ついてみてみよう。

最初に怪獣おもちゃが登場したのは、
昭和三十九年、マルザン(石田実社長
=昭和四十三年解散)から出された、
ゴジラのプラモデルとソフト人形だっ
た。これはある程度の人気をみたもの
の、ブームを呼ぶほどにはならなかっ
た。ブームのきっかけとなったのは、
昭和四十一年同じマルザンが、テレビ
映画「ウルトラQ」(TBS)の著作
権を買って怪獣のプラモデルとソフト
人形をつくったことだった。

現在マルサン社長として、怪獣おもち
ゃと取り組んでいる石田実氏は当時の
ことを振り返って、「アイデアに行き
づまり、なんとかこれを切り抜けよう
ということで、会議を開いたところ、
『ゴジラを歩かせはどうか』という案
が出、『よしやってみよう』というこ
とで、まずプラモデルをやり、次いで
ソフト人形をやったが、これは急いで
つくらせたため、ノミのあとが残って
いるようなほんとうに粗末なものだっ
た。そして、本格的に怪獣をはじめた
のはテレビの『ウルトラQ』の版権を
円谷プロから買ってからだった。確か
二十万で買ったと思う。当時爬虫類の
プラモデルを出そうと思い、その型を
つくっていたので、その製法でスピー
ドよく怪獣の型はできた。しかし問屋
では『こんなもの売れないよ』と最初
相手にしてくれなかった。それが、も
のすごく売れた。一日に八トン車で三
台も出た」といっている。

この怪獣おもちゃの人気も四十三年暮
れまでだった。

四十四年四月、マルザンにあって最後
まで怪獣おもちゃと取り組んだ石田光
田郎氏と鐏三郎氏がブルマァクを発足
させ、新しい怪獣おもちゃづくりに腐
心した。マルザンで怪獣のソフト人形
の開発に当たった鐏氏は「怪獣のおも
ちゃは、子どもにとって絶対に必要だ
必ず売れる」という信念をもっていた
という。

しかし、一度すたれた商品がカムバッ
クした例のない業界にあって、周囲の
目は冷たかった。メーカーも問屋も疑
問視するばかり。が、どうにかこうに
か苦労の末、怪獣を発売したところ、
すぐに品不足になるという好調ぶりだ
った。そして今日のブームを再現する
までブルマァクの苦労はたいへんなも
のだった。

「われわれは『もう一度子どもたちの
手に怪獣を』という信念で、業界にみ
なぎっている怪獣に対する不信感を打
破するため苦労した。何度壁につき当
たったかわからないが、この信念と怪
獣に対する愛着があったからこそ乗り
切れたのだと思う」と石田光田郎氏は
いっている。とにかく、ブルマァクの
地道な努力によって怪獣は息を吹き返
し、今日の第二期怪獣ブームを迎えた
わけである。

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怪獣おもちゃの価値は、、、
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想像力を養い、コミニュケーションを
深めるおもちゃ
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怪獣は一時好ましくないおもちゃとし
てママゴンの槍玉にあがったこともあ
ったが、これだけ人気になるところを
みると、それなりの価値もあるとすべ
きだろう。

「怪獣そのものは、子どもたちに創造
力を与える刺激になるし、交換ごっこ
も、子どもに与える価値観を無視でき
ない」ことは、阿部進氏が怪獣おもち
ゃの価値についてある新聞で語った言
である。

玩具メーカーでは「先に述べたように
怪獣ものはいまや子どもたちの生活に
密着し、必需品的な価値をそなえてい
る。したがって、怪獣ものは子どもた
ちのコミニュケーションを深めるなか
だちとして迎えられる」(米沢玩具・
大熊氏)

「子どもの成長過程においては、必ず
何かに熱中する時期があるものだが、
たまさかいまの子どもたちには、テレ
ビの画面などでよく知った怪獣ものが
感覚的にもフィットし、かれらの生活
面に奥深く入り込んでいるわけで、子
どもたち相互のコミニュケーションを
より深める一つの道具とされている。
ただ、素材的には、塗料など十分に注
意しないと危険玩具の対象とされる場
合も考えられよう」(増田屋斎藤貿易
・織地氏)

「怪獣おもちゃを悪いものとする考え
方には1情緒、情操的観点からみたも
の2素材面からみたものの二つがある
が1については現実の動物であるイヌ
やゾウのおもちゃを悪いとしないのに
空想や物語の世界の怪獣おもちゃを悪
いとすることは当たらない。むしろ、
夢を育てるということで有意義と思う
2については、大いに注意すべきであ
り当社ではイ 安全性 ロ 耐久性
ハ 参加性 ニ プレイバリュー ホ
学校で教えるものを助けるものという
ことに、注意している」(バンダイ・
神谷善次内地部次長)

「怪獣おもちゃを、持つことによって
テレビのストーリーを再現するごっこ
遊びが成立し、自分が怪獣になれるの
ではないか。また、ごっこ遊びを通し
て、グループ意識が強まり、コミュニ
ュケーションに対する理解、協力など
が養われるという面もあるのではない
か」(トミー・森氏)

「怪獣遊びは、砂場、水などの広い遊
びに発展し、子どもの健康促進面にも
役立っている。また最近では、公害の
おそろしさ、悪さを教える怪獣も現れ
ており逆に消費者に歓迎される面が多
い」(日東科学・城島貞雄企画部長)

要するに、怪獣おもちゃのセールスポ
イントは、子どもに夢を与え、想像力
を培うと同時に、怪獣ごっこを通して
コミニュケーションを深め、社会生活
のルールを身につけるという点にあろ
う。
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怪獣ブームはいつまで続く
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永遠に安定商品として残るだろうか、
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怪獣ブームとはいうが、いったいいつ
まで続くだろう。
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テレビの「帰ってきたウルトラマン」
は二クール(二十六回)の予定だそう
だが、「前回のウルトラセブンの視聴
率がやや低かったのは、いわゆる本格
的な怪獣が少なく、宇宙人系のものが
多く登場したからで、今回はその点に
も注意し、なんとか三十%台に持って
いきたい。そして、決定したことでは
ないが、その後延長する話もいまから
持ち上がっている」(末安氏)という
ことであり、九月までは放映され、う
まくいったらさらに延長されるかもし
れない。

そういうことを背景に、怪獣おもちゃ
関係者の話を聞いてみよう。

「怪獣は、いままたブームに向かって
いるが、これは周期的なものが大きい
と思う。これまでの、ブームとなった
キャラクターものを振り返ってみても
そのブームは4年間を一つの消長にし
て繰り返されてきたし、当社の場合も
四十二年七月に怪獣のプラ模型を発売
し、それが予想以上のヒットとなった
が、その後も一連の怪獣ものは安定し
た荷動きを続け、昨年末より一段と荷
動きが活発化してきた。昨年末の怪獣
ものの荷動きを一昨年と比べると、前
年比二五○%ぐらいの数字だが、それ
でも四十二年ごろの四○~五○%」と
いう日東科学・城島氏の話が、今回の
怪獣ブームの実態を伝えるものであろ
う。そして「ブームは七、八月がピー
ク」という予想だが、浅草玩具橋本三
郎商品課長も「当社でも近く、ウルト
ラマンのキャラクターものを発売する
が、流行のバスに乗り遅れたくないと
いう対外的な理由からで、別にブーム
に便乗して売ろうとは考えず、じっく
り売っていくつもりだ。それに、この
ブームも夏までがいいところ」として
いるし、トミー・森氏も「テレビの取
り上げている間人気は続くだろうが、
今夏がピーク」としている。

一方、テレビで取り上げる間、あるい
は今年いっぱいとする意見も少なくな
い。増田屋斎藤貿易・織地氏の「テレ
ビの影響力は想像以上に大きいので、
テレビ放映中は続くだろう」という意
見をはじめ、バンダイ・神谷氏、ニッ
コー・平野氏、タカトク・須藤氏、山
勝商店・山本氏、なども同じような見
方をしているし、米沢玩具・大熊氏は
「今年いっぱい続いてほしいが、夏場
までが山となるかもしれない」とみて
いる。いずれにしても、ここ当分はブ
ームが続くようだが、ブームを歓迎し
ない向きもある。
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懸念されるダンピング
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「われわれが苦労して今日のブームを
築いたものだと自負しており、その点
では商品もよく出るのでうれしいかぎ
りだが、ブームになると、あっちこっ
ちで取扱うため、逆に競合が激しくな
り、停滞することも考えられる。そし
て、いわゆるニセモノが出て市場が混
乱しダンピングなども起こるのではな
いか」(ブルマァク石田光田郎社長)

「夏以降は怪獣キャラクターものが市
場に氾濫」(森氏)「あまり取扱い商
社が増えると、ブームはそう長く続か
ないだろう」(米沢玩具・大熊氏)

「現在のように、取扱い商社が増えブ
ームになると、人気が、ピークになる
のも早く、そのあとは、商品がダブつ
き、末端市場での価格の混乱が懸念さ
れる」(城島氏)「ブームになると、
イミテーションが出てつぶし合いにな
る」(浅草玩具橋本三郎商品課長)な
どの意見もある。

ちなみに「帰ってきたウルトラマン」
の商品化権を申請した会社は、八十九
社、うち六十四社に対して去る三月十
六日に許可が得られたが、そのうち七
○%ぐらいは玩具関係ということで、
「一種類の商品については一社しか許
可しない」(日本音楽出版・内藤一彦
氏の話)とはいえ、競争激化は必至で
あろう。

ここで問題になるのはイミテーション
である。「ウルトラマン」の商品化権
窓口である日本音楽出版では「ニセモ
ノとは1無許諾のもの、2似て非なる
もの」(内藤氏)としているが1につ
いては商道徳からいっても許されない
ことである。2については、商法上か
らも別に問題がないわけだが、商品化
権をとり、印税(帰ってきたウルトラ
マン」の場合は六%)を払っていると
ころにとってはおもしろくないのが当
然である。「正常の印税を払ったとこ
ろは、その分高くなるので、競争でき
なくなり、ダンピングが起こる」(浅
草玩具橋本三郎商品課長)

「種類別に正規なもので適正な競争は
いいことだと思うが、業界の秩序を乱
す海賊版は許せない」(ニッコー・平
野徳男常務)

「一口に、怪獣といっても、ちゃんと
版権を払っているものと、出所のはっ
きりしないものでは大違い。前者には
物語があり、子どももよく知っている
が、後者はその人気に便乗した、いわ
ばニセモノだ。こっちは正規の版権を
払っているのに、版権も払いもせず、
怪獣ならなんでも売れるだろうという
安易な企画で出したって、売れるはず
がない。現にそういうもので損した小
売店や問屋も出ているくらいで、ブー
ムの足をひっぱるだけだ」(ブルマァ
ク石田光田郎社長)と辛辣な意見が多
い。

一方『創作怪獣』と名づけ、独自のお
もちゃを開発しているマルサン・石田
社長は「キャラクターものでないもの
をイミテーションとみるのはあまりに
も独善的だ。確かにうちの怪獣につい
ては、図鑑にのっていないので、知ら
れていない点もあろう。だからうちで
はそれに匹敵する『怪獣新聞』を発行
して、その性格づけをやると同時に大
いにPRしてその徹底を図っている」
と反発している。

この問題については、両者それぞれの
見解もあり、おもわくもあるだろうか
ら、ここで結論めいたものを出すこと
は避けるとして、無許諾のものについ
ては、現在でも、二、三、問題になっ
ているところもあるようだが、玩具業
界の地位向上のためにも、絶対に追放
したいものである。

ちなみに、商品化権を無許諾で行使し
た場合には、1業界誌に謝罪文を掲載
する2正規の版権の四~五倍のペナル
ティを払わせる3契約を打切る、など
の措置がとられることになっている。
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残るのは良心的なもの
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先の話ではあるが、ブームが去ってあ
との怪獣おもちゃは、いったいどうな
るのであろう。

キャラクターものでは定評のあるバン
ダイの神谷氏に、これまでのキャラク
ターものの消長を加味しながら、今後
を予測してもらおう。

「一時期(三~四年前)、ウルトラQ
ウルトラマン、などのキャラクターが
玩具業界でも幅をきかし、それらの商
品を扱ったところはかなり稼いだ。

そして、その後しばらくマスコミキャ
ラクターものの人気が続き、サンダー
バードに代表されるSFものがブーム
を呼んだ。しかし、そのブームがあま
りにもものすごいものであったために
か、やがてそれらのブーム的な現象も
影をひそめる結果となった。そして昨
今の怪獣ブームのリバイバルというこ
とになるわけだが、その個々のものは
一つの流れとして現出していることが
わかる。

それはウルトラQウルトラマンの時代
からサンダーバードの時代にキャラク
ターものの主流が移行する時点におい
て、いわゆるSF的な面の強いものが
人気の主流となり怪獣そのものは忘れ
られた存在だった。もっとも、ブルマ
ァクのみが地道に追い続け、またそれ
が今度のブームの原動力になったとい
えるが。

それが昨年あたりから、忘れかけてい
たキャラクターということで、見直さ
れることになったのではなかろうか。
とにかく、怪獣は、マスコミのつくり
あげたキャラクターの中でも、最大の
ヒットであり、業界でも例のないブー
ム商品の復活ということで、怪獣おも
ちゃは業界にしっかりと根をはやした
といえよう。だから、いまのようなブ
ーム現象は長く続くとは考えられない
が、そのあとでも、安定した商品とし
て永遠に残るであろう」

このほかにも、怪獣おもちゃは永遠に
残るとみる向きが圧倒的に多いがその
条件としては、あくまでも消費者に対
して良心的なものであることはいうま
でもない。

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エピローグ
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むすびにする前に、消費者の反応を肌
でキャッチしている小売サイドの意見
を聞いてみよう。「前のブームからし
ばらく消えていたが、最近は三~六歳
の指名買いが増えている。これはテレ
ビの影響もさることながら、ヒット商
品がなかったからではないかと思う。
金額的には前回のブームより上だが、
これは、単価があがったせいだろう。
怪獣に対する反応としては。大人は気
味悪がって、おみやげに買っていくと
いうケースは少なく、よく売れるのは
日曜日に母親といっしょにやってきた
ときである。怪獣に対するうちの販売
姿勢は、玩具全体に占める割合が、少
ないこともあり、放っておいても売れ
るのでおいているだけである。それに
いまのブームは一時的なものであり、
おそらく、水もののでる五月末ごろに
は売行きが落ちるのではないかとみて
いる」(高島屋・桜井玩具売場主任の
話)

「テレビの影響だろうが、うちでは、
いちばん売れている。他に比べて単価
は低いが、数量的には圧倒的に出てお
り、テレビも新番組が始まるので、こ
れからもますます売れると期待してい
る。だからゴールデン・ウィークには
『怪獣まつり』をやるつもりである。
とにかく、一度売れなくなったものが
再び売れた前例がないだけに、怪獣は
人気商品として、定着するだろう」(
大丸東京店・中川玩具売場次長の話)

「これまでもずっと継続して売れてい
たが、昨年の秋ごろから、急速に数が
出だした。そして、今年にはいってや
や下火になったようだ。とにかく、前
回のブーム後も問い合わせがかなりあ
ったが、商品が手にはいらないで困っ
た。だから、ブームが消えたというよ
りも、メーカーがつくらなかったため
目立たなかったのではないか」(銀座
・キンタロウ)

こうしてみると、怪獣おもちゃは少な
くともテレビの放映中は圧倒的な強さ
をみせ、その後ダンピングなどがあっ
て市場が混乱するかもしれないが、良
心的なものは安定商品として残るとい
うことである。

そこで、小売サイドにあっては、あく
までも良心的な商品を選んだ品揃えを
行い、的確に情報キャッチしそれに合
わせた販売方法を研究すべきであり、
また問屋にあっては、粗悪品をシャッ
トアウトし、ニセモノを、ボイコット
し、玩具業界の良識を守る壁になるく
らいの心構えを持つべきであり、そし
てメーカーにあっては、商品化権を犯
すような恥ずべきことは、ただちにや
め、またいたずらに競合し、ダンピン
グを招くようなことは避け、消費者に
心から喜ばれるような良心的な商品を
つくるように心がけるべきであろう。

とにかく怪獣は、マスコミの生んだ最
大のキャラクターであり、怪獣おもち
ゃは玩具業界のドル箱なのである。し
かも、一度忘れられた商品は二度と顧
みられないという業界のジンクスを破
って、ブームを再現したのである。

もっと大事に育てていこうではないか
”帰って来た怪獣おもちゃ” を