今回の投稿は、岩手の山奥に秘密工場発見
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軌道に乗ったニセモノ一掃運動・その
1(2023/10/5)
軌道に乗ったニセモノ一掃運動・その
2(2023/10/6)
軌道に乗ったニセモノ一掃運動・その
3(2023/10/7)
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上に挙げた投稿3回分、その中でも、
軌道に乗ったニセモノ一掃運動その1
の文中に出てきた、
「岩手県の山奥の大がかりなニセモノ
づくりに対しての円谷プロダクション
がとった訴訟」
という1971年1月に岩手県の山奥
で発見された、大がかりな、ニセモノ
ソフビ人形づくりの一味による、一連
の事件に関する諸々。
当時の玩具業界誌のトピック記事中で
この部分に、フォーカスした文献を、
リライト投稿します。
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ニセモノ追って四〇〇キロ
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岩手の山奥に秘密工場発見
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マスコミ・キャラクター・ブームに、
つけこんで、「ウルトラマン」「ウル
トラセブン」「ミラーマンなどの商品
化権を無断許諾使用し、大量のソフト
ビニール製ニセモノを製造、販売して
いたグループがあることがわかり、盛
岡地裁一関支部で岩手県の山奥にある
ニセモノ工場を仮処分するとともに、
東京・成城署では、著作権法、商標法
不正競争防止法、意匠法違反などの疑
いで捜査をはじめた。そこでこの事件
の全貌と関係者の意見をご紹介すると
ともに、メーカーはもちろんのこと、
問屋、小売店のみなさまに、ニセモノ
撲滅を訴えたい<編集部>
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事件の発端は、昨年春から、ソフトビ
ニール製のウルトラマン、ウルトラセ
ブンはじめ、怪獣を製造販売している
ブルマァク(石田光田郎社長)に「手
足がとれる」、「足がぐらぐらする」
「ビッコだ」などという苦情が消費者
から頻繁によせられたことに発した。
不審に思った同社は「ウルトラマン」
「ウルトラセブン」の、権利者である
円谷プロダクション(円谷一代表取締
役)と協力して調査したところ、大量
のニセモノが関西を中心にして全国に
流れていることをつきとめた。
ニセ・ウルトラマン、ニセ・ウルトラ
セブンは、ちょっとみただけでは、大
きさ、色、形、包装も本物そっくりで
足の裏にはブルマァクの商標まで刻印
されており、違うのは台紙に証紙が張
られていないだけ、というしろもので
ある。
明らかに、ブルマァクの製品をもとに
して型をおこしてつくったものと思わ
れるものであるが、品質そのものは、
材質も仕上げも、「うちの検査じゃ通
りませんね」(石田社長の話)といわ
れるようなまったくの粗悪品である。
円谷プロダクションの、顧問弁護士で
ある安原法律特許事務所(安原正之所
長)の佐藤治隆弁護士の話によれば、
「包装もブルマァクの包装のセロファ
ンと止め口をはずし、証紙をはいだも
のをもとにして印刷したもので証紙を
はいだあとホッチキスの穴まではっき
り出ている」というとおり、本体ばか
りででなく、包装までも、まったくブ
ルマァクのものをそのままそっくり真
似たものである。
そして、ニセモノの常として、問屋な
どに買いたたかれるため、できるだけ
コストを下げようとしたことが材質面
の粗悪さとなって現れている。
しかし、もしこれが、材質、仕上げと
もによかったら、消費者から苦情もこ
ず、いまだにニセモノが堂々と売られ
ていたかもしれないので、ある面では
むしろ幸いだったともいえよう。
そこでさらに調査をつづけ、昨年七月
埼玉県三郷地区でつくられていること
をつきとめ「首謀者と思われるOとT
を警視庁に告訴」(佐藤弁護士)する
ことに踏み切った。
ところが、これらニセモノが、一部テ
キ屋のルートにも流されていたという
ことで「後難をおそれて、証人になる
人を得られなかった」(石田社長)た
め、今日まで、両社とも手の打ちよう
がないまま時が過ぎてしまった。
そこで、両社では、証人を得るべくさ
らに調査をつづけるかたわら「ニセモ
ノと知っていて、それらを買っていた
東京の玩具問屋に対しては、内容証明
をつきつけた」(石田社長)りして、
側面から、ニセモノ一掃に努めた。
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岩手の山奥にニセモノ工場を発見
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ところが、昨年末、岩手県の山奥で、
ニセモノがつくられているらしいとい
う情報をつかみ追跡調査を行った結果
一関市から二十~四十キロ山奥にはい
った、東磐井群大東町と東山町の農家
で製造されている現場をつきとめ同時
にニセモノをつくらせていたグループ
の中心とみられる男もわかり、証人も
得られるという自信がついたので、両
社はこのほど、首謀者とみられる岩手
県一関市北十軒街六丁目六番地サニー
トーイ、加茂玩具製作所あるいは加茂
商店こと加茂喜孝、岩手県東磐井群東
山町長坂字町裏・菅原慶喜方・鈴木昭
平の両名を商標権侵害などで告訴。同
時に盛岡地方裁判所一関支部に商標権
等侵害行為差止仮処分を申請、同支部
では一月二十日仮処分の決定(別掲)
をするとともに翌二十一日、岩手県東
磐井群東山町長坂字町裏菅原慶喜方工
場、同じく東磐井群東山町興田金野一
郎方工場など、六か所を調査、ニセ・
ウルトラマン百五十五ダース、ウルト
ラセブン四百ダース、ミラーマン四百
ダースなどを押収した。
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この措置、について、佐藤弁護士は、
「裁判所でも、かれが明らかに悪質な
ことを認め、相手方の意見を聞かず無
審査で仮処分の命令を出したが、著作
権に関しては、これまでどちらかとい
うと、消極的な措置しかとられなかっ
ただけに、今後のいい判例となろう」
と語っているように裁判所でもこの種
問題を重視しはじめたことを物語るも
のであろう。
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現場は、めったに車も、通らない過疎
地帯で、そこに散在する十軒ほどの農
家の馬小屋、牛小屋、たばこ乾燥室な
どを改造し、中にカマやプレッサー、
遠心機などをすえつけ、近在の農家の
主人や主婦たち約百人をニセモノづく
りに従事させていたという。
ここで発見された、ニセモノは、先に
説明したとおりのウルトラマンとウル
トラセブンのほか、昨年十一月末から
フジテレビ系で放映を開始されたばか
りの「ミラーマン」、それに「ウルト
ラマン」の怪獣ゴモラ、「仮面ライダ
ー」(NET系東映動画制作)、「月
光仮面」(日本テレビ系・宣弘社プロ
ダクション制作)のソフトビニール製
品もありこれらには©表示がなかった
という。
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マスコミ・キャラクターによる商品化
権を、使用する場合は、権利者より使
用許諾を得なければならないことにな
っており、許諾を得たものは、ブルマ
ァクのように、万国著作権条約に基づ
き、著作権表示をしなければならない
ことに決められているので、これか明
らかにニセモノであり商品化権無許可
使用による不正商品であることがわか
る。
また、「仮面ライダー」「月光仮面」
などのニセモノが発見されたことで、
佐藤弁護士は、「これまで、この種の
著作権侵害の行為に対しては、どちら
かというと甘い態度で接していたがこ
れからは『仮面ライダー』のバンダイ
さんや東映動画さんなどと共同戦線を
張って臨むようにしたいものだ」と提
案している。
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ニセモノ一掃のため徹底的にたたく
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ところで、このたび告訴され、東京・
成城署(円谷プロダクションの本社が
世田谷区砧にあたるため)に、任意出
額を求められた首謀者加茂喜孝が「以
前は東京の水元地区や埼玉の三郷地区
でニセモノをつくっていたが、追求が
きびしくなって、危険を感じ、九月ご
ろから岩手でつくるようになったらし
い」(佐藤弁護士)というのを証明す
るかのように、ブルマァクの石田社長
の持っている加茂の名刺には、「営業
所・東京都葛飾区水元小合町一六七四
工場埼玉県南埼玉群八潮町八条三八五
一」と印刷してあった。
つまり加茂は、はじめのうちは、東京
埼玉地区で、先に告訴されたOやTら
といっしょに、グループでニセモノづ
くりをやっていたとおもわれる。
目下のところは、加茂の自供待ちとい
った、ところだが、ブルマァクでは、
「このグループだけで数万ダースはつ
くっていただろう」(石田社長)と語
っており、他にもニセモノがつくられ
ていると思われるので、ブルマァクが
過去三年間で製造販売したウルトラセ
ブン、ウルトラマン約二千万個(石田
社長の話)ということからみても、相
当数のニセモノが市場に出向っている
ことになる。
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一方、ニセモノづくりに、従事してい
た人たちは、、一日男千五百円、女七
百円の低賃金で働かされていたがかれ
らは「おもちゃづくりのおかげで冬の
間出かせぎにいかないですむと思い、
葉たばこ乾燥室や物置を改造して工場
をつくった。注文のおもちゃがインチ
キとは、、、。オレたちも被害者だ」
とぶ然としていたという。
また、加茂といっしょに、告訴された
鈴木昭平が朝日新聞記者に語ったとこ
ろによれば、「昨年六月、自宅の物置
を改造して小規模おもちゃ工場を造っ
た。知人に紹介されて一関市内に住む
四十歳がらみの男(加茂)に頼まれ、
はじめは近所の人二、三人と動物のお
もちゃを製造したが昨年十二月二十日
ごろこんどは怪獣おもちゃの部品を注
文された。物置を改造した工場が狭い
ため、町内の別のところに小さな工場
を造り年内四百ダース分を製造した。
製品は出来上がり次第この人が持って
いった。今月三日からは、部品の組み
立てもするようになった」(朝日新聞
一月二十八日付朝刊より)ということ
であり、村人たちはニセモノというこ
とは知らず、まったく加茂らによって
あやつられていたものと思われる。
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佐藤弁護士が、現地の人に聞いた話で
は「一日百ダースつくれといわれた」
ということであり、苛酷な条件下で仕
事をすることを強いられていたようで
ある。決して満足といえない施設で、
しかも不慣れな人たちがせかされて仕
事をさせられたら、品質が落ちるのは
当然である。
品質が悪ければ、それを本物と思って
買った、消費者から、本物をつくって
いるブルマァク、権利者のところに苦
情がくるのも当然。「うちの商標にど
ろをぬられた。うちの営業実績に照ら
して損害賠償を請求するつもりだし、
買った問屋も故買の疑いがあるので、
弁護士ともどうするか相談中だ」(石
田社長)と憤っているし、円谷プロダ
クションでも、「不正行為はもちろん
許せないが、それ以上に、ニセモノ塗
料に有害物でもはいっていたら、それ
こそ社会問題になるのでこの際ニセモ
ノを一掃するため、本栽培で徹底的に
やりたい」(梅本正明第三営業課長)
といっている。
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また、佐藤弁護士は、「業界の中には
『ニセモノをつくったって簡単にはつ
かまらない。つかまっても十万円も払
えばなんとかなる』というような風潮
が強く、このまま放っておいたら、た
いへんなことになる。ことしは徹底的
にニセモノ撲滅のためにたたかう」と
いっており、石田社長も「業界のモラ
ルの低下がなげかわしい。業界全体が
エリを正して商売し、消費者に対して
イメージアップを図るためにも、ニセ
モノは絶対に許せない」と強い態度を
表明している。
それを、知ってか知らずか「こんどの
事件の首謀者の中には『どんなことが
あっても、どんどんカマをふやしてま
だまだやるぞ。ブルマァクなんかぶっ
つぶしてやる』と地元の人に語ってい
るそうだ」(佐藤弁護士)ということ
である。
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さて、この事件の結着は、どういうこ
とになるだろうか。
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「ニセモノを扱った問屋には、決して
知らなかったとは、いわせない。問屋
段階までやるつもりだ。そして損害倍
賞は、相手方の得た、利益の全部とい
うこともありうる」(佐藤弁護士)、
「これまでは内容証明による示談など
ですませたが、商品化権を守るために
は、たとえ、日時、費用がかかっても
最後までやるつもりだ」(梅本課長)
といっており、どういう結果になるか
・・・・・。
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いずれにしても、この事件は、ほんの
「ニセモノ」氷山の一角であり、この
グループ以外にも相当多くのニセモノ
づくりが横行しており、とくに関西な
どでは野放し状態だといわれている。
「ニセモノは、問屋、小売の段階で、
注意すれば、撲滅できるものだと思う
ので、今後のためにもみなさまのご協
力かたをお願いしたい」(梅本課長)
というように、一部悪質者によって、
玩具業界全体のイメージを損なうこと
を避けるためにも、一丸となってニセ
モノボイコットに立ち上がろうではな
いか。
「おもちゃ屋なんか、みんな同じよう
なことをやっている」と、首謀者らが
うそぶいていた、ということを聞くに
つけても、みんなの力でニセモノを一
掃したいものである。
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